ある突然普段の3倍ぐらいのスピードとパワーで仕事ができるようになった話

誰の身にも起こりうるちょっと変わった経験をしたのでシェアしてみたい。私の好きな食べ物の一つに牡蠣がある。昔、仕事で広島に住んでいた頃は、週に一度ほど同僚と車で島の牡蠣小屋に出かけていた。海から牡蠣がベルトコンベアで引き上げられるのを横目に、炭火で焼いた牡蠣を楽しんだものだ。

それはさておき、ある時、当時付き合っていた彼女と偶然、広島の街中で牡蠣を食べる機会があった。その後、別れて一時間ほどかけて自宅に戻り、さらに家の近くの食堂でも牡蠣を食べた。

翌日、出勤のため、当時自転車通勤に使っていたマウンテンバイクにまたがり、7kmの道のりを職場へ向けて出発した。

途中、踏切を渡ろうとした瞬間、突然猛烈な吐き気に襲われ、線路の手前で黄色い胃液を吐いてしまった。すぐに職場に連絡して休みをもらい、そのまま病院へ向かうことにした。

病院での診断は、確か「急性細菌性腸炎」だったと思う。いわゆる食中毒だ。医師からは24時間の絶食を指示され、幸い症状は軽かったため、翌日には職場に復帰した。

部下からは「治るの早すぎませんか?本当に牡蠣に当たると、もっと地獄のような痛みですよ」と言われたが、それはさておき、問題は絶食だった。 当時まだ20代で食べ盛りだった私は、当然ながら空腹を感じた。それでも医師の指示を守り、24時間が経過するまでは食事を我慢した。

当然、空腹のまま仕事をすることになったが、当時は若くして幹部として勤務しており、かなりの激務をこなしていた。その日も、前日に休んだ分を含め、大量の仕事を処理しなければならなかった。

デスクについて早速仕事を始めたところ、あることに気づいた。自分の体に力がみなぎっているのだ。絶食でお腹が空いているはずなのに、これは一体どういうことだろう。

結局、私はその日、普段の3倍ほどの頭の回転、スピード、パワーで仕事をこなし続けた。自分でも驚くほどのパフォーマンスだった。あまりにも普段と違い、パフォーマンスが良すぎたため、その原因を探ることにした。思い当たるのは、絶食による空腹の影響ぐらいだった。

後日、インターネットで調べてみると、空腹が体に与える影響に関する情報が山ほど出てきた。もしかしたら、自分が知らなかっただけで、空腹がパフォーマンスに良い影響を与えるのは常識なのかもしれない。調べてみたところ、代表的な影響は以下の通りだ。

①脳内でアセチルコリンの分泌が促され、脳が活性化する②消化吸収機能を休ませることで、老廃物の排出や体の修復が進む③善玉ホルモンが分泌され、血管の流れが改善される④その他、多くのメリット

そうこうしているうちに、タイムリミットである24時間が経過し、その日の夕飯を食べることになった。ご想像の通り、翌日以降の仕事のパフォーマンスは、元の自分に戻っていた。

余談だが、一度牡蠣に当たると、その後牡蠣を食べられなくなることが多いと聞く。しかし、私はそうはならなかった。これ以上のオチは無いが、人体の不思議と可能性を感じた出来事であった。