昔はどれだけ食べても体重が増えない体質だった。しかし、年齢を重ねるにつれて代謝は確実に落ち、気がつけば体重計の針は70kgを指していた。これはまずい、と真剣にダイエットを考えるようになったものの、これまでダイエットとは無縁だったため、何から始めればいいのか皆目見当がつかない。
とりあえず、情報収集を開始した。そんな折、YouTubeでDaigo氏の動画の中で「オートファジー」という言葉が飛び込んできた。動画の内容は、細胞が飢餓状態になると脂肪がエネルギーに変わる「ケトン代謝」が活発になり、みるみる体重が減少するといういわゆる「オートファジー理論」に基づいた「16時間ダイエット」に関するものだった。
この「オートファジー理論」は、東工大の大隅良典教授がそのメカニズムを解明し、ノーベル生理学・医学賞を受賞した、細胞内の不要なたんぱく質や古くなった細胞小器官を分解・再利用するシステムだ。「自食作用」とも呼ばれるこのプロセスを、16時間という食事をしない時間を作ることで意図的に賦活させ、ダイエットに繋げるという考え方に、科学的な裏付けを感じ、実施してみることにした。
このダイエット法のルールはシンプルで、16時間の断食時間を設けられれば、残りの8時間は基本的に何を食べても良いというものであった。私の場合、夜20時までに食事を終え、翌日の昼12時まで何も食べないというスケジュールで試してみることにした。20時から12時まで、きっちり16時間を確保できる。また、断食中もコーヒーやお茶などカロリーの無いものであれば摂取できるというのも魅力だった。
実際に試してみるとその効果は驚くほど早く現れた。正月明けから始めて、5月末には9キロの減量に成功。しかも、その後も大したリバウンドは見られない。目標体重に到達した喜びも束の間、この頃から予期せぬ問題に悩まされるようになった。それは、腰痛だった。
当初、この腰痛の原因が全くわからなかった。まさかダイエットと関係しているとは夢にも思っていなかったのだ。
その後数年間、太ったら16時間ダイエットを始め、適正体重に戻ったらやめるを繰り返す中で、ふと気がついた。腰痛が起こる時期は、決まって16時間ダイエットを実施している期間と重なっている。
調べてみると、16時間ダイエットは脂肪だけでなく、筋肉も落としてしまうという情報を見つけた。特に、運動を並行して行わない場合、筋肉量の減少は顕著になるらしい。もしかすると、16時間ダイエットによって腰回りのインナーマッスルが弱体化し、それが腰痛を引き起こしているのではないかと考えた。
それ以降、極端な16時間ダイエットはやめ、1日の食事回数を少しだけ増やし、少量でも栄養バランスの取れた食事を摂るように心がけた。すると、長年悩まされていた腰痛はとりあえずはみられなくなった。
今回の経験を通して、オートファジーを活用した16時間ダイエットは、確かに体重減少には効果的だった。しかし、その一方で、運動をせずに安易に続けると、筋肉量の減少という思わぬ副作用を引き起こす可能性があることを身をもって学んだ。
今後は、もう少し時間に余裕ができたら、適切な運動を取り入れつつ、無理のない範囲で16時間ダイエットを見直してみようと考えている。科学的な理論に基づいたダイエットも、自身の体の状態をしっかりと観察し、バランスを取りながら実践することの重要性を痛感した出来事だった。
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