解決型と共感型のコミュニケーションについて

ほとんど自分の恥を晒すような記事ではあるが、言語化しておいて方が良いレアな経験だと考えたのでブログとして書き留めることにした。

かなり昔の話になるが、ある芸術系の大学に通う女性と付き合っていたことがある。彼女は、幼い頃に他人から暴力を受けた経験があるらしく、そのことが原因で気が強い性格になったと話していた。実際、彼女との会話では、突如としてキレだして電話をブチ切りしたり、私のアドバイスを頭ごなしに否定したり、強圧的な態度を取られることが少なくなかった。

そんな中、ある時、彼女から電話で、同じ学部の先輩がしつこく言い寄ってきて困っているという相談を受けた。一つ上の男性から、半ばストーカーのようなアプローチを受けているらしいとのことだった。

数十年経った今なら理解できるのだが、もしそのストーカー行為が本当に問題であれば、警察に相談するのが筋である。警察に相談せずに恋人に話す時点で、彼女は私の反応を見たかったか、私をコントロールしようとしていたか、あるいはただ話を聞いてほしかったかのいずれかだったのだろう。しかし当時の私は、彼女の取り乱した様子から、これは一大事だと感じてしまったのだ。

ある時、電話で彼女から「その先輩が今から家に来ると言われた」と泣きじゃくりながら連絡があった。私はついに緊急事態が発生したと思い込み、遠距離だったにもかかわらず、新幹線に乗って彼女のもとへ駆けつけた。しかし、彼女は何事もなかったかのようにあっけらかんとしており、それどころか、予告なしに突然訪れたことを責められてしまった。

これはほんの一例に過ぎないが、そんなこんなでこのようなすれ違いが頻繁に起こり、結局、彼女とは別れることになってしまった。彼女の行動があまりにも理解できなかった私は、相談に乗ってくれるカウンセラーを探し出し、この出来事を相談してみることにした。

カウンセラーによると、一部の女性には、男性の気を引くために、半ば演技のような狂言ともとれる言動(今回のように、警察には相談しないのにストーカー被害を訴えるなど、緊急事態を演出して相手の注意を自分に向けさせる)をする人がいるとのことだった。さらに、そのような人には、ただ話を聞いて共感してあげるだけで気持ちが落ち着くことが多いので、とにかく傾聴することが大切だというアドバイスも受けた。今にして思えば、彼女はおそらく、自分のわがままを私にぶつけてみて私の反応を見たかったのだろう。

またこの時、私は初めて、人と人とのコミュニケーションには「解決型」と「共感型」の二つのタイプがあることを知った。それにしても、こんなにも辛い経験をしなければ理解できなかった共感型のコミュニケーションとは、一体何なのだろうと、悲しい気持ちになったのを覚えている。

私は、おそらく解決型は左脳由来、共感型は右脳由来の活動に起因するコミュニケーションのやり方なのではないかと推測している。学校教育で論理的な思考ばかりを重視していると、どうしても左脳の活動ばかりが注目されがちだ。そのため、共感型のコミュニケーションを家庭や学校で学ぶ機会のないまま大人になってしまう人が多く、それが人間関係におけるすれ違いや悲劇を生む一因になっているのではないかと考えている。

この経験を通して、共感型という新しいコミュニケーションのタイプを発見できたこと、そして、相手が言葉や態度で示す表面的な意味と、その裏に隠された本当の気持ちがあまりにもかけ離れているケースを体験できたことは、辛い出来事ではあったものの、私にとって学びとなった。

それ以来、他人とコミュニケーションを取る際には、前後の会話の流れや状況から、解決型の話し方をすべきか、それともただ相手に寄り添い共感すべきかを、慎重に判断しながら言葉を選ぶようになった。共感する場合は、可能な限り相手と同じ気持ちになれるように想像力を働かせ、適切な相槌を打つことが重要だ。これらは「傾聴技法」としてある程度体系化されていたりもする。相手の気持ちを理解することの重要性は、人間が感情を持つ生き物であり、共感を示すことが、人と人との結びつきを強くするからに他ならない。

しかし、どうしても考えてしまうのは、どうして人は辛い経験をしなければ、共感型のコミュニケーションを学ぶことができないのだろうか、ということだ。辛い経験をしたことがなければ、辛い経験をした相手に心から共感してあげることは難しいのだろうか?人の心、共感、そして人間関係というものの複雑さ、難しさに、今、改めて思いを馳せている。もし、この文章を読んでいるあなたが、人間関係で悩みを抱えているのなら、この経験が少しでもあなたの問題の解決にお役に立てるのであれば望外の喜びである。

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